こんにちは、医療におけるAR(拡張現実)技術が今後ますます注目されることをご存じでしょうか。
近年、目覚ましい進化を遂げるAR技術は、エンターテインメントやゲーム業界だけでなく、医療現場にも大きな変革をもたらそうとしています。
本記事では、「医療AR」と呼ばれるこの革新的な技術について、その仕組み・他のARとの違い、そして具体的な活用事例を紹介しながら、医療の未来像を探っていきます。
おおまかには、医療ARとは何か、従来のAR技術との違い、そしてそのメリットと期待される効果について解説し、後半では医療ARの具体的な活用事例をいくつか紹介しつつ医療ARの課題と今後の展望についてわかりやすく解説していきます。
医療のARとは
医療におけるAR(拡張現実)とは、患者の体や臓器にCGや画像を重ね合わせることで、医師や医療従事者がより詳細な情報を得られる技術です。
手術や診断、治療、教育など、すでにさまざまな医療現場で活用されています。
従来の医療技術では、CTやMRIなどの画像診断で得られた画像を2Dで確認していました。
しかし、AR技術を用いることで、3Dモデルを現実世界に重ね合わせ、より立体的に観察することが可能です。
そのため、医師は患者の体内構造をより直感的に理解し、より的確な判断を下せるようになります。
もっとわかりやすく解説しましょう。
この技術の特徴は、現実の世界にデジタル情報を重ね合わせることで、今まで見えなかったものが見えたり、知らなかったことを知ったりできるというものです。
例えば、街を歩いている時にスマホ画面を通してお店の情報を表示したり、入居前のマンションのリビングに家具や照明器具を配置したりもできます。
すでに実際に使われているこれらの技術が、まさにAR技術です。
医療現場でも、このARがすばらしい力を発揮します。
まるで、医師がレントゲン写真やCTスキャン画像を透視して手術しているようなイメージです。
拡張現実技術は膨大な蓄積データをもとに、瞬時に適切な画像や医療処置に関する情報を提示できます。
医療ARを使うと、医師は、患者さんの体の中にある臓器や血管を立体的に見ることができ、より精度の高い手術を行えます。
さらには、遠隔地にいる医師も、まるで目の前に患者さんがいるかのように手術を指導することも可能になるといった利用方法の実現も考えられます。
また、患者さんは、自分の病気や治療について、より分かりやすく説明を受けられます。
このように、医療ARは、医療現場を大きく変え、患者さんにとっても医師にとっても、より良い医療を実現する可能性を秘めているのです。
医療ARと他のARとの違い
医療ARと、エンターテインメントやゲームなどに用いられるARを比較してみましょう。
医療で使うAR | 手術や診断の拡張 |
大動脈弁閉鎖不全症(AR) | 病気の名前であり、拡張現実とは全く別物 |
通常のAR | ゲームやエンターテイメントで利用される |
医療ARと、エンターテインメントやゲームなどに用いられるARは、どちらも現実世界にデジタル情報を重ね合わせる技術ですが、目的、精度、安全性などの点において以下の違いがあります。
まず、利用目的において医療ARと他に使われるARとでは大きくことなるといえるでしょう。
医療ARは患者の治療、診断、医療従事者の教育などが目的で利用されるのに対し、他に使われるARは主に娯楽や情報提供などが目的で利用されます。
次に、要求される精度もはっきりと区別されます。
医療ARは患者の体や臓器を正確に再現する必要があり、高度な専門知識に基づく情報の精度が求められるからです。
これに対して、一般的なARの場合、必ずしも高い精度が求められるわけではありません。
さらに、安全性の基準も大きくことなります。
患者の体に直接触れる場合もあるため、安全性に配慮する必要があり、メンテナンス基準も必要になるケースが考えられます。
一方、他に使われるARでは安全性よりもユーザー体験を重視することが多いといえるでしょう。
これらの違いは、医療ARが手術や診断、治療、教育などの利用シーンに限定されるため、ゲームや広告などのユーザー体験の向上を目的としたAR技術とは今後も区別される必要があります。
また、医療分野においては、倫理道徳の問題も存在します。
例えば、患者の同意なしにAR技術を使用することや、AR技術によって医療格差が生じることなどが考えられます。
これらの点に注意しながら、医療ARを適切に活用していくことが要求されるといえるでしょう。
大動脈弁閉鎖不全症(AR)の原因
医療でよく使う大動脈弁閉鎖不全症の略称「AR」は、Aortic insufficiencyという意味ですので拡張現実のARとは異なります。
大動脈弁閉鎖不全症の原因について解説します。
大動脈弁閉鎖不全症(AR)は、心臓から全身に血液を送る大動脈弁が十分に閉じないために、左心室に血液が逆流してしまう病気です。
主な原因は以下の通りです。
1.弁自体に原因がある場合
- 変性性
- リウマチ性
- 感染性心内膜炎
- 先天性
に分類されますので以下に解説します。
①変性性
加齢や高血圧などによって弁が変性し、機能が低下する。
これが最も一般的な原因です。
②リウマチ性
リウマチ熱の後遺症として弁が障害される。
近年では減少傾向にあります。
③感染性心内膜炎
細菌が弁に感染し、弁を破壊することで起こる。
近年では抗生物質の発達により減少しているが、依然として重要な原因の一つ。
④先天性
生まれつき弁に異常がある。
比較的まれな原因であるが、近年では出生前診断や新生児スクリーニングの進歩により早期発見・治療が可能になりつつある。
2.大動脈基部に原因がある場合
- 大動脈基部拡張
- 大動脈解離
とに分けられますので以下に解説します。
①大動脈基部拡張
大動脈が拡張し、弁が正常に機能しなくなる。
マルファン症候群などの遺伝性疾患や、加齢、高血圧などが原因で起こる。
②大動脈解離
大動脈の内壁が剥がれ、弁が機能しなくなる。
急性の大動脈解離は、生命に関わる緊急事態である。
3.その他のまれな原因
上記以外にも、膠原病やサルコイドーシスなどの免疫疾患、薬剤の副作用などによって大動脈弁閉鎖不全症が起こることがあります。
以上、大動脈弁閉鎖不全症は、さまざまな原因によって起こる病気です。
原因によって治療法が異なるため、適切な診断と治療を受けることが重要といえます。
拡張現実(AR)の医療事例
拡張現実(AR)の医療事例をいくつか紹介しましょう。
AR技術の恩恵がどのように得られるかについても解説します。
実際の医療事例について次の例にもとづいて解説します。
- 脳腫瘍手術
- 心臓弁膜症手術
- 骨盤骨折手術
- 心疾患診断
- 癌診断
- 骨折診断
- 電子カルテ
では順番に解説していきます。
①脳腫瘍手術
AR技術を用いることで、医師は患者の脳内部の3Dモデルを生成し、腫瘍の位置をより正確に把握できるようになります。
これにより、隣接部を傷つけずに周囲の正常な組織を最大限に温存しながら、より安全かつ精密な手術を行うことが可能になるのです。
②心臓弁膜症手術
患者の心臓の3Dモデルを生成し、弁の置換手術をシミュレーションできます。
これにより、手術前にさまざまなシミュレーションを行うことで、より適切な手術計画を立てられ、手術時間や患者の負担軽減に貢献します。
③骨盤骨折手術
医師は患者の骨盤の3Dモデルを生成し、緻密な手術計画を立てられます。
これにより、従来の2D画像では困難だった、骨盤の複雑な形状を正確に把握することが可能になり、より精度の高い手術に役立ちます。
④心疾患診断
AR技術を用いることで、医師は患者の心臓の3Dモデルを生成し、心機能を分析できます。
これにより、従来の2D画像では困難だった、心室の形状や心筋の動きをより詳細に観察することが可能になり、より正確な診断を行えます。
⑤癌診断
AR技術を用いることで、医師は患者のCT画像に3Dモデルの腫瘍を重ね合わせ、腫瘍の位置や大きさを確認できます。
これにより、従来の2D画像では困難だった、腫瘍の広がりや周囲組織との関係をより詳細に把握することが可能になり適切な治療方針の決定を実現します。
⑥骨折診断
AR技術を用いることで、医師は患者のX線画像に3Dモデルの骨を重ね合わせ、より正確な骨折の位置を確認できます。
これにより、従来の2D画像では困難だった、骨折の複雑な形状を正確に把握することが可能になり、より適切な治療計画を立てられます。
⑦電子カルテ
そして、医療AR技術の中でも近年特に注目を集めているのがAR電子カルテの導入です。
その背景には、従来の電子カルテには、多くの課題があったことが挙げられます。
例えば、診察中にパソコンを操作する必要があり、患者と医師のコミュニケーションが妨げられることがありました。
また、複数の画面を確認するために、医師が頻繁に視線を移動させる必要もあったわけです。
AR電子カルテの導入は、これらの問題を解決するために急ピッチで行われている代表的な医療改革のひとつです。
AR技術を使うことで、医師は診察中にパソコンを操作する必要がなくなり、視線を自然に患者に向けたまま、必要な情報を確認できます。
これにより、診察の効率が向上し、よりスムーズな患者とのコミュニケーションに貢献します。
近い将来、病院に行かなくても精度の高い診察が受けられるようになるでしょう。
今後、さらなる技術開発が進み、医療ARの活用がより広がっていくことが期待されます。
医療のARについてまとめ
この記事では医療ARとは、という説明から他のARとの違いと実際の医療事例、今後の展望について解説してきました。
医療ARは、医療現場に革新をもたらす可能性を秘めた技術であることは理解していただけたと思います。
また、近年急発展を遂げているAIとの連携で飛躍的に技術が向上しつつあります。
今後、さらなる技術開発が進み、医療ARの活用がより広がっていくことが期待されるのではないでしょうか。