CG制作や空間デザインの制作現場で、近年重宝されているのがStable Diffusionです。Stable Diffusionは、テキストから画像を生成できる画像生成AIで、コンセプトアートや背景イメージの作成、素材検討など、さまざまな制作工程で活用されています。
この記事では、Stable Diffusionの基本的な仕組みや制作現場で注目される理由、具体的な活用シーンや使い方について分かりやすく解説します。
Stable Diffusionの特徴やメリットを理解し、業務を効率化しながら、よりクオリティの高い制作を進めていきましょう。
Stable Diffusionとは?まず知っておくべき基礎知識
Stable Diffusionとは、テキストから画像を生成できる画像生成AIです。まずは基礎知識として、仕組みや他の画像生成AIとの違いを含め、Stable Diffusionの特徴を整理します。
Stable Diffusionの仕組み
Stable Diffusionは、テキストで入力した内容をもとに画像を生成する画像生成AIです。
完成した絵を一度に作るのではなく、最初はランダムなノイズ画像を用意し、そこから少しずつ意味のある画像へ近づけていきます。この工程は「拡散モデル(Diffusion Model)」と呼ばれる仕組みによるものです。
Stable Diffusionで入力されたテキストは、画像の特徴を判断するための情報として使われます(テキスト解析)。AIは色や形、雰囲気などを少しずつ調整しながら、ノイズを減らしていきます(ノイズ除去)。そのため、同じ指示でも毎回異なる結果が生成されるのがStable Diffusionの大きな特徴です。
MidjourneyやDALL-Eとの違い
Stable Diffusionと並んで、画像生成AIの代表的なサービスとして挙げられるのが、MidjourneyやDALL-Eです。いずれもテキストから画像を生成できる点は共通していますが、使い方や考え方に違いがあります。
Stable Diffusionとそれぞれの画像生成AIの特徴を簡単に整理します。
| 項目 | Stable Diffusion | Midjourney | DALL-E |
|---|---|---|---|
| 利用形態 | ローカル/Web両対応 | Webサービス中心 | Webサービス中心 |
| カスタマイズ性 | 非常に高い | 低め | 低め |
| 生成傾向 | 指示次第で幅広い | アート性が高い | 安定した表現 |
| 制作向き用途 | 実務・検証・量産 | アイデア出し | ラフ・簡易生成 |
| 制御の自由度 | 高い | 中 | 低〜中 |
MidjourneyやDALL-Eは、手軽に高品質な画像を生成できる点が魅力ですが、細かな調整や制作フローへの組み込みには向いていません。一方、Stable Diffusionは設定やモデルを調整することで、用途に合わせた柔軟な使い方ができます。
そのため、制作現場で継続的に活用したい場合には、Stable Diffusionが選ばれるケースが多くなっています。
Midjourneyについては、こちらで詳しく解説しています。
なぜ制作現場で注目されているのか
Stable Diffusionが制作現場で注目されている理由の一つは、作業スピードを大幅に向上させられるためです。コンセプトアートや背景イメージを一から描く代わりに、方向性を確認するためのラフ案を短時間で用意でき、アイデア出しや検討の工程を効率化できます。
また、生成結果を細かく調整できる点もStable Diffusionの大きな特徴です。テキストの指示や設定を変えることで、雰囲気や構図をコントロールしやすく、用途に合わせて使い分けられます。そのため、単なる自動生成ツールではなく、制作を補助する道具として重宝されているのです。
Stable Diffusionのような画像生成AIをはじめ、生成AIを体系的に学びたい方には「生成AIセミナー」がおすすめです。基礎的な仕組みの理解から、制作現場ですぐに使える実践的な活用方法までを段階的に学べます。
ツールの使い方だけでなく、業務への取り入れ方や注意点も解説されるため、初めて生成AIに触れる方でも安心です。制作効率を高めたい方や表現の幅を広げたい方にとって、有益な学びの場となるでしょう。
Stable Diffusionの活用シーン

Stable Diffusionは、制作工程を支援する補助的な役割で力を発揮します。ここでは、CG制作やゲーム開発の現場でよく使われている代表的な活用シーンを紹介します。
- コンセプトアート制作への活用
- 背景・世界観イメージの高速生成
- テクスチャ・素材作成の補助
- プリビズ・ラフ制作の効率化
①コンセプトアート制作への活用
コンセプトアート制作は、作品全体の方向性や世界観を素早く可視化するための工程です。Stable Diffusionを使えば、テキストでイメージを入力するだけで、多様なビジュアル案を短時間で生成できます。
一から描き起こす前に複数の案を比較できるため、アイデアの幅を広げやすい点がメリットです。さらに、チーム内でイメージを共有しやすくなり、方向性のすり合わせや認識のズレを減らす効果も期待できます。
②背景・世界観イメージの高速生成
背景や世界観のイメージ作りは時間がかかりやすい工程ですが、Stable Diffusionを使うことで作業を大幅に短縮できます。街並みや自然風景、室内空間などを簡単な指示から生成できるため、方向性を確認するための素材として活用しやすくなります。
完成形として使うというよりは、雰囲気や配色、情報量の参考として利用するのがポイントです。Stable Diffusionを背景制作のたたき台として使うことで、後工程の作業効率を高められます。
③テクスチャ・素材作成の補助
Stable Diffusionは、テクスチャや素材作成の補助ツールとしても活用できます。壁や地面、布などの質感イメージを生成し、テクスチャ制作の参考にすることが可能です。
そのまま使用するのではなく、調整や加工を前提とした下絵として使うことで、制作時間の短縮につながります。特にアイデア出しや方向性確認の段階で役立ち、ゼロから描き始める負担を軽減できるのもポイントです。
④プリビズ・ラフ制作の効率化
プリビズやラフ制作は、完成形を想定したシミュレーション映像を用意し、演出や構成を確認する工程です。この段階では完成度よりもスピードが重視されますが、Stable Diffusionを使えば、カメラアングルや構図を検討するためのイメージを短時間で作成できます。
簡単な指示から複数の案を出せるため、演出や構成を柔軟に試行錯誤しやすくなるのがメリットです。最終的な制作に入る前の確認用素材として活用することで、手戻りや修正コストを抑える効果も期待できます。
Stable Diffusionの使い方

Stable Diffusionは、使う環境によってできることや操作感が大きく変わります。ここでは、Stable Diffusionの代表的な使い方として、ローカル環境、Web UI、スマホでの利用について整理します。
- ローカル環境で使う方法
- Stable Diffusion Web UIを使う方法
- スマホでStable Diffusionは使える?
①ローカル環境で使う方法
Stable Diffusionは、自分のパソコンに環境を構築して使うことができます。この方法では、画像生成を自分のPC上で行うため、細かな設定や調整がしやすい点が特徴です。モデルの切り替えや生成条件の変更なども自由度が高く、制作向けの使い方に適しています。
一方で、ある程度性能の高いPCやグラフィックボードが必要になるため、Stable Diffusionのローカル版の導入には準備が必要です。安定した制作環境を整えたい場合や、継続的に活用したい場合に向いています。
②Stable Diffusion Web UIを使う方法
Stable Diffusion Web UIは、ブラウザ上で操作できる画面を使って画像生成を行う方法です。複雑な操作を覚えなくても、入力欄にテキストを入れるだけで画像を生成できるため、初心者でも簡単に利用できます。
設定項目が整理されており、生成結果を確認しながら調整を進めやすいのが特徴です。ローカル環境と組み合わせて使われることも多く、まずは操作感をつかみたい場合や、試しに使ってみたい場合に適しています。
③スマホでStable Diffusionは使える?
Stable Diffusionは高い処理性能が必要なため、ローカル環境をスマホに直接入れて使うことはできません。ただし、Webサービスを利用すれば、スマホからでも画像生成を試すこと自体は可能です。
また、簡単なイメージ確認やアイデア出しであれば活用できますが、細かな設定の調整や大量の画像生成には向いていません。そのため、制作目的で安定して使う場合は、基本的にパソコン環境を前提にするのがおすすめです。
Stable Diffusionの詳しい使い方については、こちらで詳しく解説しています。
【用途別】Stable Diffusionのおすすめモデルと選び方

Stable Diffusionには多くのモデルがあり、目的に合ったものを選ぶことが重要です。ここでは、CG制作の代表的な用途別に、Stable Diffusionのおすすめモデルと選び方のポイントを紹介します。
- キャラクターデザインに使いたいなら
- 背景・マットペイントに使いたいなら
- コンセプトアートが作りたいなら
- テクスチャ下絵に使いたいなら
①キャラクターデザインに使いたいなら
キャラクターデザインに使うためのStable Diffusionのおすすめモデルは次のとおりです。
- Anything系
- Counterfeit系
- MeinaMix
- AOM系
キャラクターデザインでは、顔立ちや体のバランスが安定していることが重要になるため、人物表現に強く、破綻しにくいモデルを選ぶのが基本です。表情や服装のバリエーションを出しやすいモデルを使うことで、デザイン案を効率よく検討できます。
また、ポーズや構図をコントロールできる拡張機能を併用すると、意図したイメージに近づけやすくなります。あくまで最終デザインの参考素材として活用し、仕上げは手作業で行う前提で使うのが現実的です。
②背景・マットペイントに使いたいなら
背景・マットペイントに使うためのStable Diffusionおすすめモデルには、次のようなものがあります。
- DreamShaper
- Realistic Vision
- Deliberate
背景やマットペイント用途では、情報量が多く、奥行きのある表現が得意なモデルが向いています。建物や自然物の描写が安定しているモデルを使うことで、世界観の方向性を素早く確認できます。
Stable Diffusionは完成素材として使うよりも、構図や色味、雰囲気の参考として活用するのがおすすめです。生成した画像をもとに描き直したり、別ツールで加工することで、制作全体のスピードを高めることができます。
③コンセプトアートが作りたいなら
コンセプトアート作りにおすすめなStable Diffusionのモデルは、次のとおりです。
- DreamShaper
- Deliberate
- SDXL系(Stable Diffusionの新しい世代のモデル)
コンセプトアート制作では、表現の幅が広く、さまざまなテイストに対応できるモデルが適しています。細部の正確さよりも、全体の印象やアイデアの出しやすさを重視するのがポイントです。
複数のStable Diffusionのモデルを使い分けながら試すことで、思いがけない表現に出会えることもあります。制作初期の検討段階で活用し、方向性が固まった後は別の工程へ引き継ぐ使い方が効果的です。
④テクスチャ下絵に使いたいなら
テクスチャ下絵に使いたい人には、次のStable Diffusionのモデルがおすすめです。
- Realistic Vision
- Juggernaut
- Absolute Reality
- SDXL系
テクスチャ制作の下絵として使う場合は、質感表現が得意なモデルを選ぶと便利です。壁や地面、布などの素材イメージを生成し、テクスチャ制作の参考にできます。
そのまま使用するのではなく、加工や描き直しを前提とした素材案として扱うことで、制作の負担を軽減できます。アイデア出しや方向性確認の段階でStable Diffusionを活用すれば、作業の効率化につながります。
Stable Diffusionを利用する際に注意すべきポイント

Stable Diffusionは非常に便利なツールですが、制作現場で利用する際にはいくつか注意すべきポイントがあります。特に、商用利用や著作権に関する理解が不十分なまま使うと、思わぬトラブルにつながる可能性があります。
ここでは、Stable Diffusionを実務で安全に活用するために押さえておきたい注意点を整理します。
- 著作権と利用条件を確認する
- 生成結果をそのまま使わない
- 既存作品に似すぎないよう注意する
- 不適切な生成を防ぐ設定に配慮する
- クライアントと利用方針を共有する
①著作権と利用条件を確認する
Stable Diffusionで生成した画像の扱いは、使用するモデルやサービスによって条件が異なる場合があります。多くのケースでは商用利用が可能とされていますが、モデルごとにライセンスが設定されていることもあります。
そのため、Stable Diffusionを制作物として利用する前に、利用条件や注意事項を確認することが重要です。特に公開物や業務利用では、「知らなかった」では済まされないケースもあるため、事前確認を習慣にしておきましょう。
②生成結果をそのまま使わない
生成された画像は、そのまま完成品として使えるように見えることもありますが、基本的には下絵や参考素材として扱うのが安全です。細部の不自然さや意図しない表現が含まれていることも少なくありません。
制作現場では、あくまで人の手で調整・仕上げを行う前提で使うことで、品質面や権利面のリスクを抑えられます。補助ツールとして位置づける意識が重要です。
③既存作品に似すぎないよう注意する
特定の作家名や作品名を強く指定すると、Stable Diffusionの生成結果が既存作品に似てしまうことがあります。意図せず似通った表現になると、トラブルの原因になりかねない点に注意が必要です。
そのため、Stable Diffusionのプロンプトでは雰囲気や要素を抽象的に指定し、オリジナリティを意識しましょう。生成後も、既存作品と酷似していないかを確認する工程を挟むと安心です。
④不適切な生成を防ぐ設定に配慮する
Stable Diffusionは、入力するテキストや設定次第では、意図しない不適切な表現が生成されることがあります。特に業務や公開用途では、内容のチェックが欠かせません。
そのため、生成前の指示内容は都度見直し、生成後の画像を必ず確認することを習慣化しましょう。チームで利用する場合は、利用ルールを共有しておくと運用しやすくなります。
⑤クライアントと利用方針を共有する
クライアントワークでStable Diffusionを使う場合は、AI生成画像を使用することを事前に共有しておくことも重要です。後から判明すると、信頼関係に影響する可能性があります。
どの工程でStable Diffusionを使うのか、最終成果物にどのように関わるのかを説明しておくことで、トラブルを防ぎやすくなります。制作フローの一部として透明性を持って扱うことが大切です。
Stable Diffusionを制作現場で活かすために
Stable Diffusionは、イラストや背景を自動で作るためのツールではなく、制作工程を支援するための強力な補助ツールです。コンセプトアートやラフ制作、素材の方向性確認などに活用することで、作業スピードを高めつつ、アイデアの幅を広げられます。
一方で、著作権や商用利用への配慮、最終成果物の扱いには注意が必要です。仕組みや特性を正しく理解し、人の判断と組み合わせて使うことで、制作の質と効率を両立できます。
Stable Diffusionを制作フローに取り入れ、新たな表現や制作スタイルへとステップアップしていきましょう。