コンピュータグラフィックの制作には専用のソフトが必要ですが、初めての運用となるとどの製品を購入すれば良いのかわからないと悩む方もいるものです。
そんな方におすすめしたいのがSketchUpで、誰でもどこでも利用できる高性能なCADソフトとして知られています。
この記事では、SketchUpとはどのような製品なのかについて紹介しながら、導入のメリットや主な機能、そしてライセンスの種類などについて解説します。
SketchUpの概要
SketchUpは、アメリカのTrimble社が開発・提供しているCADソフトの一種です。
元々はGoogleがWebサービスの一環として提供していたものを、Trimble社が買収する形で現在に至ります。
SketchUpは感覚的な操作ですぐにクリエイティブなアイデアを形にできるような使いやすさが高く評価されており、国内外を問わず幅広いユーザーを有しています。
設計から3Dモデリングまで対応しており、プロトタイプの制作はもちろんのこと、正確な寸法が求められる本番設計においても強力な制作能力を発揮可能です。
また、ソフトをインストールして使用するだけでなく、Webブラウザからの利用にも標準対応しているのが特徴です。元々はWebサービスとして開発されていた製品というだけあり、Webブラウザから利用できる機能についても非常に充実しており、十分な編集能力と情報共有能力を実現しています。
SketchUpの強み
SketchUpが高く評価されている理由としては、以下のようなメリットを備えていることが挙げられます。
対応デバイスやOSを選ばない
まず、SketchUpの運用にあたっては機能要件が極端に少ないことがメリットです。
CADソフトはWIndows専用の製品というケースも珍しくなく、Macユーザーの選択肢は限られてしまうものですが、SketchUpはポピュラーな製品の中では数少ないWindowsとMacの両方に対応しているサービスです。
そのため、たとえ使用しているOS環境がWindowsとMacでMacで混同している現場でも、問題なくCADソフトを使いこなせます。
また、SketchUpはWebブラウザでも基本機能を利用して、モデルの閲覧や編集ができるクラウドサービスとしての側面を持つ製品です。
SketchUpのソフトがインストールされていないPCから製品を操作できるだけでなく、スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスからの利用にも対応しているのが便利な製品と言えます。
そのため、環境整備に多くのお金や時間をかける必要がなく、出張先から簡単にスマホでデータにアクセスしたり、自宅からリモートで作業をしたりといった、働き方改革の実践にも役立てられるのが強みです。
無料で利用できる
SketchUpは基本的に有料のCADソフトですが、ある程度の機能が揃った無料プランも無期限で利用できるのが嬉しいところです。
多くのCADソフトは期間限定で無料でのサービス利用を可能にするというプランを設けているところですが、SketchUpについては終始無料での利用ができます。
ただ、SketchUpの性能を十分に引き出すためには有料版の購入を検討しなければならず、有料プランも複数のプランに分かれているため、目的に合わせた製品の導入が必要です。
有料プランの種類については、後ほど詳しく解説します。
拡張性に優れる
SketchUpをより便利に利用するための方法として、拡張プラグインを活用するというものがあります。SketchUpには公式のプラグインストアである「Extension Warehouse」と呼ばれるサービスがあり、これを利用することでSketchUpに機能を追加したり、自身の使い方に合わせてユーザビリティを改善したりといったことが可能です。
通常の実装機能には用意されていない拡張機能を無料で利用できたり、サードパーティが作った高度な業務効率化ツールを導入できたりするため、積極的に活用してみましょう。
SketchUpの主な機能
SketchUpの主な機能としては、
- 2D設計
- 3Dモデリング
- レンダリング
の3つに分かれます。それぞれの機能的特徴について解説します。
2D設計
SketchUpは基本的に3Dモデリングに特化した製品ではありますが、平面図の2D設計にも対応しています。プロジェクトの設計図をドキュメント形式で作成し、詳細を書き込むことができるので、建物についての詳細を紙媒体などで把握する際に役立つ機能と言えるでしょう。
また、3Dモデルと2D設計図面の内容はリンクさせることができ、3Dモデルに変更を加えると、2D図面にも変更内容が適用されます。
同時に複数の作業が発生する手間を回避できるのは大きなメリットです。
3Dモデリング
SketchUpの3Dモデリング機能は、モデリング初心者でもすぐに使いこなせるような感覚的な操作感を備えているのが特徴です。
SketchUpの代表的な機能と言えるのがプッシュ・プルツールで、これは平面図を最初に描き、それを引き伸ばしたり押し出したりすることで立体図形を作成できるというものです。
また、SketchUpでは表面のディテールを簡単に高いレベルで仕上げられるサンドボックスと呼ばれるツールも非常に便利です。これは最初に平面図を作成し、そこに曲面加工を簡単なクリックとドラッグ操作でもたらせるもので、3Dモデルに質感を与えたりするのに活躍します。
これらの機能をうまく使い分けることができれば、SketchUpで高度な3Dモデルをスムーズに作成できるようになるでしょう。
レンダリング
SketchUpは作成した3Dモデルを、そのままレンダリングすることもできる便利な製品です。
通常であれば3Dモデルをレンダリングしたい場合、モデリングツールで作成したのち専用のレンダリングツールを別途立ち上げる必要があります。
一方のSketchUpは、モデリングツールに加えてレンダリングツールも備えているので、モデリングが完了した後はシームレスにレンダリングへ移行することができます。
高度なレンダリング機能を備えたプランも存在し、生産性向上や品質向上に効果を発揮するでしょう。
SketchUpのライセンスの種類
SketchUpには大きく分けて
- SketchUp Free
- SketchUp Go
- SketchUp Pro
- SketchUp Studio
の4種類が挙げられます。それぞれの違いについて、以下の表で簡単にまとめています。
SketchUp Free | SketchUp Go | SketchUp Pro | SketchUp Studio | |
オフライン利用 | 不可 | 不可 | 可 | 可 |
2D設計 | 不可 | 不可 | 可 | 可 |
XR対応 | 不可 | 一部可 | 可 | 可 |
高度なレンダリング | 不可 | 不可 | 不可 | 可 |
料金 | 無料 | $119/年 | $349/年 | $749/年 |
まず注目したいのが、SketchUpをオフラインで利用するにはSketchUp Pro以上の有料版を購入する必要があるということです。無料版のSketchUp FreeはWebブラウザでの利用に限定されているため、インターネット環境の整備が必須と言えるでしょう。
また、2D設計についてもSketchUp Pro以上の購入が必要となるため、設計業務を丸ごとSketchUpで運用したいという場合は、こちらの導入を検討しましょう。
レンダリング機能やXR対応についてもSketchUp Pro以上での利用が前提となっていますが、SketchUpの性能を十分に引き出すためにはハイエンドプランであるSketchUp Studioの導入が必要です。特にレンダリング業務もSketchUpに一本化するような運用を考えている場合は、SketchUp Studioの利用が前提となると考えておきましょう。
SketchUp Studioは年間で749ドルと決して安くない料金が発生しますが、2D設計からレンダリングまで、3Dモデリングとその周辺の業務も同製品に一本化できることを踏まえると、高いコストパフォーマンスを発揮してくれるはずです。
SketchUpのはじめ方
続いて、SketchUpを初めて利用するという方に向けて、利用開始の方法を紹介します。SketchUpを利用する際には、大きく分けて
- SketchUp Freeを利用する
- SketchUpの無料トライアルを利用する
という2つの方法があります。まずSketchUp Freeを利用する場合ですが、こちらはまず公式サイトにアクセスし、Trimbleのアカウントを作成します。
アカウント作成後、上のページに戻って「モデリングを開始」を選択すると、SketchUp Freeが自動で立ち上がるので、利用の準備はこれで完了です。
2つ目の無料トライアルを利用する場合ですが、こちらも最初にアカウントを作成する必要があります。公式ページから「30日間の無料トライアル」を選び、画面の指示に従うことでソフトのダウンロードが可能です。
SketchUpについてのまとめ
この記事では、SketchUpの主な機能やメリット、そしてそれぞれのプランの違いについて解説しました。SketchUpは便利な3Dモデリングソフトで、プロジェクトの設計からレンダリングまで、ワンストップで実行可能な汎用性を備えています。
SketchUpならではの感覚的な操作は、モデリング未経験のユーザーにも使いやすいよう設計されているので、すぐに使いこなすことができるでしょう。
まずは無料版や無料トライアルから利用を開始し、基本的な操作方法を身につけると良いでしょう。
