Illustratorを使用する際に、オブジェクトの中や背景など、塗りつぶしが必要になる場面はいくつもあるでしょう。
ただ、Illustratorは他のデザインソフトのように、バケツマークのツールを使って塗りつぶすということができません。そのため、特殊な塗りつぶし作業が必要です。
それでは、Illustratorではどのように塗りつぶしをすれば良いのか、詳しい方法をご紹介します。
Illustratorの塗りつぶしとは
ソフト | 塗りつぶし機能の有無 | 備考 |
Illustrator | × | ライブペイントツールで再現することは可能 |
Photoshop | ◯ | 塗りつぶし機能あり |
Illustratorでは、ベクターという形式でデザインを行っていきます。
ベクター形式は、デザインを構成する線や色など、全ての情報が数式になっているのが特徴です。
デザインソフトの中には、ピクセルのドット、点でイラストやロゴが構成されるものもあります。それをラスター形式と呼び、ベクター形式とは別物です。
ラスター形式であれば、デザインを構成する大量の点を一色に変えるという塗りつぶしができます。
しかし、ベクター形式のIllustratorではそれが不可能です。
そのため、塗りつぶしのためのバケツツールがありません。
塗りつぶしを行うためには、Illustrator独自の方法を使う必要があります。
塗りつぶしの方法は複数ありますが、主に使用されるのはライブペイントツールです。
Illustratorの基本に関しては下記記事でご覧になってください。
Illustratorで塗りつぶしをする基本的な方法
それでは、Illustratorで塗りつぶしを行う方法を詳しく解説していきます。
オブジェクトを用意する
まずは、Illustratorで塗りつぶしの対象になるオブジェクトを用意しましょう。
長方形や円など、線で構成されたオブジェクトが必要です。
そして、ライブペイントツールを使用する場合、オブジェクトの始まりと終わりが閉じられている、クローズパスにしなければなりません。
ライブペイントツールでグループを作成
オブジェクトを用意できたら、そのオブジェクトを選択してください。
オブジェクトの中に他のオブジェクトが入っているなど、複数配置されている場合は、全て選択する必要があります。
そして、ツールパネルから「ライブペイントツール」を選びましょう。
その後、選択したオブジェクトをクリックします。
オブジェクトにマウスカーソルを持っていくと、「クリックしてライブペイントグループを作成」という表示がでるはずなので、間違えることはありません。
色を選択して塗りつぶし
ライブペイントグループを作成できたら、塗りつぶしができる状態になります。
ツールパネルにある「塗り」を選択しましょう。
そうすると、色を選択できるカラーピッカーが出てくるので、塗りつぶしたい色を選んでください。
色を選択した状態でオブジェクトにカーソルを持っていくと、塗りつぶし対象になる境界線が赤く表示されます。複雑なデザインを制作する場合は、その境界線を目印にしながら、塗りつぶしをしていきましょう。
アピアランスを使って塗りつぶすやり方
Illustratorには、オブジェクトを装飾できる、アピアランスという機能があります。
その機能を使って、ライブペイントツールとは異なる塗りつぶしを行うことも可能です。
オブジェクトを選択して、ツールパネルから「塗り」を選択してください。
そして、カラーピッカーから色を選択すれば、塗りつぶしができます。
また、「ウィンドウ」メニューから「スウォッチ」を選択すると、ストライプやドットなどのパターンで塗りつぶしを行うことも可能です。
スウォッチウィンドウのオプションメニューから、「スウォッチライブラリを開く」を選択して、自由なパターンを選びましょう。
Illustratorで綺麗に塗りつぶしをするコツとは
Illustratorの塗りつぶしを綺麗に仕上げるには、いくつかコツがあります。
方法次第では、手間がかかったり、良くない見栄えに仕上がったりするかもしれません。
では、どのような工夫をすれば、塗りつぶしが上手にできるのかを解説します。
塗りつぶし前のオブジェクトを綺麗に仕上げる
Illustratorの塗りつぶしが綺麗にできるかどうかは、塗りつぶし前の線画状態のオブジェクトにかかっています。そのため、塗りつぶしを始める前に、オブジェクトをしっかりと仕上げましょう。
特に、余計な隙間やはみ出しなどは、後々の塗りつぶしに影響します。
デザインとしてあえて作るのは問題ありませんが、ミスで隙間やはみ出しができてしまうのであれば、事前に修正してください。
ライブペイントツールの隙間オプションを使う
Illustratorのライブペイントツールは、基本的には線と線がしっかり重なっている、クローズパスのオブジェクトにしか対応していません。
けれど、全ての隙間を埋めることが、大きな手間になってしまう場合があります。
また、隙間を埋めると、見栄えが悪くなる時もあるでしょう。
そのような場合は、ライブペイントツールのオプションを使ってください。
「オブジェクト」メニューから「ライブペイント」「隙間オプション」を選択しましょう。
そして、塗りの許容サイズを変更すると、ある程度大きな隙間があるオブジェクトでも、クローズパスのオブジェクトと同じように塗りつぶしが可能です。
選択ツールを駆使する
大量の小さなパーツで構成されているなど、とても複雑なオブジェクトを塗りつぶす場合、一部を塗り忘れてしまうリスクがあります。
そうなると、綺麗な塗りつぶしはできません。そのリスクを回避するために、選択ツールを駆使しましょう。
塗りつぶしたいオブジェクトを取りこぼさないように、なげなわツールや自動選択ツールなど、最適なツールを使い分けると良いです。
塗りつぶしした後にグラデーションにしたい人はこちらも参考にしてください。
Illustratorで上手に塗りつぶしができない時の対処法
Illustratorで制作するイラストや使用環境次第では、塗りつぶしができない場合があります。
どのような原因で塗りつぶしができなくなるのか、対処法と共に確認していきましょう。
環境設定を変更する
Illustratorで塗りつぶしを行うためには、ツールパネルの「塗り」を選択しなければなりません。
しかし、「塗り」が選択できない場合があります。
そのような状態で塗りつぶしはできないので、Illustratorの設定を変更してください。
「編集」から「環境設定」「選択範囲・アンカー表示」を選びます。
出てくる設定画面の「オブジェクトの選択範囲をパスに制限」にチェックマークが入っているはずなので、それを外して「OK」を押しましょう。
そうすれば、問題なく塗りつぶしができるようになります。
パスの閉じたオブジェクトにする
ライブペイントツールで塗りつぶしをする場合、基本的にはオブジェクトのパスが閉じていなければいけません。
隙間オプションでも対応できないほどのスペースがある場合、塗りつぶしは不可能です。
もし、スペースが小さければ、パスの連結を行いましょう。
ツールパネルからダイレクト選択ツールを選び、スペースが開いている部分を選びます。
その後、「オブジェクト」メニューから「パス」「連結」を選択してください。
そうすれば、塗りつぶしができるようになります。
隙間が大き過ぎるのであれば、線を追加して、一時的なクローズパスを作ると良いです。
線で閉じられていれば、問題なく塗りつぶしは行なえます。
その後で、線を削除すると良いでしょう。
新しく塗りつぶし用のオブジェクトを用意する
塗りつぶしができない原因がはっきりしない場合、塗りつぶし用のオブジェクトを新しく作るという選択肢もあります。塗りつぶしたい範囲に合わせて、オブジェクトを作成しましょう。
そして、そのオブジェクトを任意の色に塗りつぶします。
その後、「オブジェクト」メニューの「重ね順」から「最背面へ」を選択すると、実質的には塗りつぶした状態と同じ見た目になります。
手間がかかりますが、塗りつぶさなければならない数が少ない時や、原因を探る時間がない場合に有効的な方法です。
Illustratorの塗りつぶしについてまとめ
Illustratorで塗りつぶしをするには、Illustratorの性質を把握した上で、適切な方法を用いなければなりません。
塗りつぶしをしなければ、線やテキストだけの、シンプルなデザインしかできないでしょう。
色付きの図形を使うという方法もありますが、非効率になりやすいです。
したがって、Illustratorを使うのであれば、必要な時にすぐ塗りつぶしができるように、方法はしっかり覚えておきましょう。
