3DCGソフトであるBlenderでは、複数のオブジェクトを使った高度なグラフィックを作ることも可能です。その高度なグラフィック作成に役立つ機能に、レイヤーというものがあります。
オブジェクトごとにいくつかの層に分けられる機能で、オブジェクトの個別編集や管理など活用できる場面は多いです。今回はBlenderのレイヤー機能の使い方やコツについて、詳しく解説していきます。
オブジェクトを階層ごとに分けるレイヤー
Blenderのレイヤーとは階層のことです。オブジェクトが存在する空間を、複数の透明な層に分けると考えると良いでしょう。そして、どのオブジェクトがどの層の上に存在するのかを決めることができます。
例えば球体と立方体・円錐という3種類のオブジェクトを用意するとしましょう。その3種類を全て異なるレイヤーに紐づけすると、厳密にはそれぞれ違う層の上に存在する形になります。
Blenderの3Dビューポート上では全ての層がまとめて表示されているため、レイヤーの存在を実感することはありません。しかし、実際にはオブジェクトは異なる層の上にあるため、お互いに干渉し合うことがないのです。
Blenderの基本的な使い方をおさらいしたい方には、こちらの記事がおすすめです。
表示の確認や一括編集に有効
Blenderでは基本的に全ての階層とレイヤーが同時に表示されています。しかし、一部のレイヤーだけを非表示にするということもBlenderでは可能です。
ひとつの3Dビューポートの上に大量のオブジェクトが存在していると、オブジェクトを個別に確認することは決して容易ではありません。そこでBlenderのレイヤー非表示機能を使って、一部のオブジェクトだけを見られるようにすれば確認は容易です。
実際に背景オブジェクトのレイヤーだけを表示する、建物以外を非表示にするといった使い方をしているユーザーは数多くいます。レイヤーごとにまとめて編集の手を加えるという使い方も可能です。同じ性質を持ったオブジェクトをレイヤー単位で編集すれば、効率的な作業を実現できるでしょう。
コレクションとビューレイヤー
Blenderには元々、空間を階層に分けるレイヤー・レンダリングで使用するレンダーレイヤーという2種類のレイヤー機能がありました。新しいBlenderのバージョンでは、レイヤーはコレクション、レンダーレイヤーはビューレイヤーという名前に変わっているので注意しましょう。
コレクションは、複数のオブジェクトを同じフォルダ内に入れるようにまとめられるBlenderの機能です。表示非表示を切り替えられたり、まとめて編集できたりする点は、従来のレイヤーと変わりません。ビューレイヤーは、3Dモデルに色や質感を持たせるレンダリングの設定を、コレクションを使ってまとめて管理できる機能です。
レイヤーの種類 | 機能 |
コレクション(レイヤー) | 複数のオブジェクトを同じフォルダ内にまとめられる機能 |
ビューレイヤー(レンダーレイヤー) | レンダリング設定をまとめて管理できる機能 |
Blenderのレイヤー機能の使い方
それでは実際にBlenderのレイヤー機能とコレクションを使う方法を確認していきましょう。
オブジェクトをコレクションにまとめる
オブジェクトをレイヤーに分けたり、コレクションごとにまとめる場合、画面右側にある「シーンコレクション」を使用します。その中には、どのようなオブジェクトがあるのかが表示されている状態になっています。右上の箱の形をしたアイコンをクリックして、新しいコレクションを作成しましょう。
そして、どのようなオブジェクトと結びつけるのかを考えて、適切な名前を付けます。その後、シーンコレクション内にあるオブジェクトをドラッグして、コレクションに移動させれば、複数のオブジェクトを同じレイヤーとして扱えるようになります。
Blenderではコレクション内にコレクションを作成して、階層をより複雑にすることも可能です。
コレクションの表示切替
レイヤーとして扱うコレクションを非表示にする場合は、シーンコレクション内にある目のマークをクリックしてください。対象になっているコレクションが、オブジェクトごと非表示になります。
非表示にしても、見えなくなっているだけでオブジェクトは存在します。オブジェクトが存在しない状態を作り上げたいのであれば、目のマークの横にあるチェックマークをクリックしましょう。そうすればオブジェクトは消えますが、改めてチェックマークを付ければ元に戻せます。
Blenderのレイヤー機能の高度な使い方
Blenderのレイヤー機能では、オブジェクトごとにコレクション分けして表示を切り替えるのが基本ですが、それよりも高度な使い方もできます。その一例をご紹介します。
コレクションごとにレンダリングを設定
Blenderのレンダリングでは、オブジェクトの質感や影の映り込みなどを設定していきます。ビューレイヤーを使用すれば、そのレンダリングをコレクションごとに設定可能です。
まずはビューレイヤー用の新規のコレクションを作成しましょう。そして、そのコレクションが有効になっている状態で、別のコレクション内にあるオブジェクトのレンダリングを設定していきます。その状態で、ビューレイヤーをオフにすると、レンダリングは無効になります。
また、ビューレイヤー用として新しく別のコレクションを用意すれば、オンとオフによって全く異なるレンダリングを同じオブジェクトに反映させることが可能です。
アニメーションでコレクションを活用
Blenderではオブジェクトを動かしたアニメーションの制作も可能です。アニメーションは、パラパラ漫画のように、複数枚のフレームを連続再生させる形で作ります。そのためBlenderでは、オブジェクトを少しずつ動かしながらフレームを作らなければなりません。
その際にレイヤー機能で、複数のオブジェクトをひとつのコレクションとしてまとめておくと、全部を一緒に動かせます。オブジェクトを個別に動かすよりも、効率的なアニメーション作成が可能です。
Blenderでアニメーションを作る方法は、こちらの記事で紹介してます。
Blenderのレイヤーを使いこなすコツ
Blenderのレイヤー機能を使いこなすためには、いくつかコツがあります。そのコツを紹介していくので、レイヤー機能を使用する際には活用してください。
ショートカットキーを使用する
Blenderのレイヤー機能を使うには、シーンコレクション上で色々な操作をすることになりますが、そのシーンコレクションにはショートカットがあります。マウスで細々と操作をするよりも、キーボードを駆使した方が効率的な作業を実現できる場合が多いです。
レイヤー機能を使いこなすには、使用頻度の高いショートカットはひと通り覚えておきましょう。代表的なものは下記になります。
- オブジェクトを選択した状態で「M」→選択したオブジェクトがコレクションの中に入る
- 「X」→オブジェクトを削除する
- 「Ctrl + G」→新しくコレクションを作成
- 「Ctrl + Alt + G」→選択中のオブジェクトをコレクションから外す
レイヤー分けのルールを設ける
Blenderのレイヤー機能で、オブジェクトをどのようにコレクション分けするのかはユーザーの自由です。ただし制限がなければ、乱雑なレイヤー分けになってしまう恐れがあるので注意しましょう。
複数の木や建物の形をしたオブジェクトを背景のコレクションに入れたり、立体物のコレクションに入れたりして管理が煩雑になってしまうのはよくあることです。そういったことにならないよう、あらかじめコレクション分けのルールを決めておくことをおすすめします。
Blenderのレイヤー分けについてはこちらの動画でも紹介されています。
Blenderのレイヤー機能を使いこなそう
Blenderでシンプルな3Dグラフィックを作るだけであれば、オブジェクトを層ごとに分ける必要はないかもしれません。しかし高度なグラフィックを作るのであれば、どうしてもオブジェクトの数は増えてしまいます。
ひとつの層だけで管理をするのは大変なので、レイヤー機能が必要になる可能性は高いでしょう。Blenderを使いこなしたいのであればレイヤー機能はいずれ必須となるため、早めに活用できるようになっておくと良いです。