世界最大のテック企業の一角を担うGoogleは多様なWebサービスを提供していることでも知られています。その中の一種に「Google SketchUp」と呼ばれるサービスがありましたが、現在は別会社が同サービスを買収し、異なる運営元で一般に広く普及しています。
この記事では、そんなGoogle SketchUpがどのようなサービスであったのかに触れながら、Google SketchUpの後継であるSketchUpシリーズの概要について、詳しく紹介します。
Google SketchUpとは
Google SketchUpは、かつてGoogleが保有していた3DモデリングができるWebサービスです。最大の特徴は、当時でも珍しくソフトのインストール不要でWebブラウザからモデリングツールを使えるということでした。
一般的に、3DモデリングソフトはPCやサーバーにインストールして利用するオンプレミス製品が大半であるため、ソフトを利用するためには製品をインストールしたマシンを常に手元に置いておく必要があります。一方でGoogle SketchUpはクラウドベースで動作するソフトであったため、インターネット環境さえあればどこからでもサービスを利用することができました。また、パフォーマンスは手元のマシンではなくGoogle管轄のサーバー上で実行されていたので、手元のマシンスペックが低くともスムーズに運用ができる点も強みの一つでした。
そんな先進的なWebサービスであったGoogle SketchUpですが、2012年にアメリカのTrimble社が同サービスを買収し、以降は同社によって「SketchUp」としてリニューアル、および開発運営されています。そのため、現在Google SketchUpと呼ばれるサービスは存在せず、従来のユーザーも新たに生まれたSketchUpの方を利用することとなりました。
Google SketchUpとSketchUpの違い
Google SketchUpとSketchUpでは、主に以下の3つの違いが挙げられます。それぞれの相違点について、詳しく確認してみましょう。
運営会社が異なる
上でも紹介しましたが、まずGoogle SketchUpとSketchUpでは運営会社が異なります。現在提供されているSketchUpはTrimble社が運営しているため、GoogleにSketchUpについてのサポートを求めることはできません。
また、GoogleのサービスとSketchUpの互換性が完全に保たれている保証もないので、Googleの各種サービスと連携して相乗効果が得られるようなメリットはメリットはあまり期待しない方が良いでしょう。
とはいえ、SketchUpもGoogle SketchUpと同様に、Google Chromeをはじめとする各種Webブラウザで動作するWebサービスの一面を持っていることには違いがありません。Webブラウザから利用できるサービスであることはGoogle SketchUpでもSketchUpでも変わらないので、安心して利用できます。
オフライン利用ができる
Google SketchUpからSketchUpにリニューアルしたことで起きた最大の変化は、オフラインでの利用に対応したことです。Google SketchUpはこれまでオンライン専用のサービスとして展開されていましたが、SketchUpは有料プランを導入することで、オフライン利用に対応します。
オンラインのみのサービスとなると、インターネット環境がない場所での利用が大きく制限されることとなるため、やや柔軟性に欠ける側面があります。特に3Dモデリングソフトは山奥などのネット環境が制限されやすい場所で運用することも珍しくないですが、SketchUpであればオフライン利用が可能なので、安心です。
高度な拡張機能を備えている
SketchUpはいわばGoogle SketchUpのアップグレードバージョンのような位置付けで、そのままでも高度な運用が可能な製品ですが、プラグインを使った機能拡張能力を標準で備えている点も強みと言えます。
SketchUp公式のプラグインストアである「Extension Warehouse」には、公式のプラグインやサードパーティが開発した無数のプラグインが公開されており、その大半は無料での利用が可能です。痒いところに手が届くような、便利な拡張機能が揃っているだけでなく、テクスチャなどの素材も公開されているので、制作業務の可能性をさらに飛躍させることができるでしょう。
自分だけの使いやすいSketchUpとしてユーザビリティを向上させられるため、積極的に活用したいところです。
SketchUpの主要な機能
SketchUpの主要な機能は、
- 2D設計
- 3Dモデリング
- レンダリング
の3つです。それぞれで何ができるのか、順に紹介します。
2D設計
SketchUpの便利なところとして、平面図の設計ができる点が挙げられます。3Dで作成した建築プロジェクトを2Dドキュメント化し、詳細をドキュメント内に書き込みながら設計図として運用することが可能です。3Dモデリングソフトによっては2D用ソフトを別途用意する必要があるのですが、SketchUpではその心配はありません。
また、2Dの平面図と3Dモデルは常に情報をリンクさせることができ、3Dモデルを編集して寸法や形状を変更した場合、その変更内容が平面図にも反映されます。そのため、平面図と3Dモデルを別個に運用する二度手間がかからないので、業務効率化に役立つでしょう。
3Dモデリング
SketchUpを使った3Dモデリングは、感覚的な操作で誰でも簡単に立体モデルを製作できるのが特徴です。この点はGoogle SketchUpから継承されている同製品の最大の強みであり、ドラッグ&ドロップ操作だけでも大体の処理を行えます。
例えば同製品に実装されているプル・プッシュツールは、平面図形をはじめに作成し、それを引き延ばしたり、押し出したりすることで簡単に3Dモデルを生成できるという便利な機能です。細かく線や高さを調整しながら立体に仕上げる必要がなく、スピーディに立体を生成できるのが強みと言えます。
また、サンドボックスと呼ばれるツールを使用すれば、3Dモデルのディテールも丁寧に仕上げることができます。これは平面を最小に作成し、そこにクリックやドラッグ操作で曲面加工を行うことで、テクスチャを細かく描けるという機能です。
スピードとクオリティの両方を効率よく追求できるのは、SketchUpならではの強みと言えるでしょう。
レンダリング
SketchUpのもう一つの特徴が、高性能なレンダリング機能を備えているという点です。3Dモデルをフォトリアルに仕上げるためには欠かせない工程であるレンダリングですが、通常は3Dモデリングツールとは別にレンダリングソフトを立ち上げて実行するのが一般的です。
一方でSketchUpの場合、レンダリングツールを内蔵しているので3Dモデリングが終わったのち、そのままレンダリング作業に移行できるので、別途ソフトを用意したり、立ち上げたりする必要はありません。
プロジェクトに関する業務をSketchUpに一本化し、スマートな業務環境を実現できるでしょう。
SketchUpは無料で利用できる?
SketchUpの上記のような機能をフル活用したい場合、有料版の購入が必要となりますが、基本的な3Dモデリング機能やオンライン作業のみを体験してみたい場合は、無料版であるSketchUp Freeの利用が役立つでしょう。
SketchUp FreeはGoogle SketchUpの後継とも言える製品で、SketchUpの無料版として提供されています。利用に当たってはアカウント登録が必要ですが、登録さえ完了すれば無期限無料で使い続けられるため、SketchUpの大まかな使用感を確かめる分には十分なサービスです。
SketchUpの種類
Google SketchUpの後継と言える製品がSketchUp Freeに当たりますが、それ以外にもSketchUpにはいくつかのプランの種類が存在します。以下の表は、SketchUpの主要プランをまとめたものです。
SketchUp Free | SketchUp Go | SketchUp Pro | SketchUp Studio | |
オフライン利用 | 不可 | 不可 | 可 | 可 |
2D設計 | 不可 | 不可 | 可 | 可 |
XR対応 | 不可 | 一部可 | 可 | 可 |
高度なレンダリング | 不可 | 不可 | 不可 | 可 |
料金 | 無料 | $119/年 | $349/年 | $749/年 |
まず、基本無料で使用できるのはSketchUp Freeのみであり、こちらはオンライン専用の基本機能をまとめたサービスです。
SketchUp GoはSketchUp Freeでは少し物足りないという人に向けて用意されているプランで、一部XR対応などの機能追加が行われています。
本格的なSketchUp運用が可能なのは、SketchUp Proからです。こちらはオンラインでの利用はもちろん、インストールしてのオフライン利用が可能で、2D設計などの大幅な機能追加も行われています。
SketchUpの性能をハイエンドで利用したい場合は、SketchUp Studioの導入が必要になるでしょう。基本的なモデリング機能に加え、高度なレンダリングソフトも備わっているので、オールインワンの作業環境が整備できます。
Google SketchUpについてのまとめ
この記事では、Google SketchUpの現在やその後継であるSketchUpシリーズについて詳しく紹介しました。Webブラウザから利用ができたGoogle SketchUpの強みは、現在もSketchUpシリーズに受け継がれており、そのユーザビリティの高さが評価されています。
まずはSketchUp Freeから利用を開始してみて、物足りなさを感じた際には上位モデルに移行するような使い方が良いでしょう。