3DCGソフトとして高い人気を誇るスケッチアップ(SketchUp)は、優れた利便性が評価されているのはもちろんですが、モデリング以外の業務にも対応できるということにおいても注目されているソフトです。
中でも目玉の機能となるのがレンダリングツールで、スケッチアップ単体でモデリングからレンダリングまでこなせてしまうという非常に便利なものとなっています。
この記事では、そんなスケッチアップのレンダリングツールについて、具体的な仕様やメリットなどを解説します。
スケッチアップ(SketchUp)の概要
スケッチアップはアメリカのTrimble社が提供している3DCGソフトで、元はGoogleがWebサービスとして運営していたものを2012年に買収し、同社が開発・提供を行うようになりました。
スケッチアップの最大の特徴は、Google運営時代から続くWebブラウザで動作するというオンラインに標準対応している汎用性です。大抵の3DCGソフトはオフラインでの利用を前提としていますが、スケッチアップについてはオンラインサービスを標準としており、クラウド環境での利用に適しています。
そのため、スケッチアップを使った関係者間での情報共有はクラウドストレージを使って簡単に行えたり、データをクラウドから直接編集したりといった使い方ができ、生産性の向上にも大きく貢献できる製品です。
スケッチアップの主な機能
スケッチアップの主な機能は、
- 3Dモデリング
- 2D設計
- プラグイン
の3つが挙げられます。それぞれ詳しく解説します。
3Dモデリング
スケッチアップの3Dモデリング機能は、感覚的な利用ができるよう洗練された操作性を備えているのが特徴です。簡単なマウス操作とキーボード操作で、誰でも思いのままにオブジェクトを生成できます。例えばスケッチアップの代表的な機能であるプル・プッシュツールは、平面図を描いてそれを押し出したり引き伸ばすだけで綺麗な3Dモデルを生成することができるツールです。
また、3Dモデルのディテールを細かく仕上げるための機能として、スケッチアップにはサンドボックスツールと呼ばれるものを備えています。これは平面図に対してマウス操作で簡単に曲面をもたらすことができるというもので、プロレベルの仕上げを簡単にもたらしてくれるのが強みです。
2D設計
3Dモデリング機能に注目が集まりやすいスケッチアップですが、実は2D設計にも対応しているのが特徴です。スケッチアップ上で作成した3Dモデルを平面のドキュメントに落とし込み、書類を作成できます。
2Dで作成した平面図は3Dモデルと連動しており、スケッチアップでは3Dモデルを変更した際には2Dドキュメントの方も自動で変更が行われます。同時に2つのデータを修正する必要がないので、便利な機能と言えるでしょう。
プラグイン
既存の機能だけでは物足りないという方に向けて、スケッチアップは公式のプラグインストア「Extension Warehouse」を設けています。これを利用することで通常の製品にはない拡張機能を利用できるようになり、スケッチアップ公式のものからサードパーティのものまで、拡張できる機能は多様です。
有料のプラグインもスケッチアップには存在するものの、その多くは無料で利用可能なものであるため、色々と機能を追加しながら使い勝手の良い製品にカスタマイズすることができます。
スケッチアップでレンダリングはできる?
もう一つスケッチアップの重要な機能で忘れてはならないのが、レンダリング機能です。レンダリングとは3Dモデリングの仕上げの作業のようなもので、フォトリアルなモデルに仕上げたり、シーンに応じた最適な加工を施し、業務の目的達成に役立てたりするのに役立ちます。
通常、レンダリングはモデリングソフトとは別の専用のレンダリングソフトを使って行うのですが、スケッチアップについてはモデリング作業と同じ環境で、内蔵のレンダリング機能を使ってそのまま実行することが可能です。
モデリングからレンダリングまでをワンストップで行えるため、スケッチアップに業務を一本化し生産性向上を実現できます。
スケッチアップのレンダリングツールについて
スケッチアップ上でレンダリングを行う場合、利用できるのがフォトリアルかつリアルタイムでのレンダリングができる「V-Ray」と呼ばれるソフトです。Chaos社が提供するレンダリングソフトのV-Rayを、スケッチアップ上でそのまま動作させることが可能です。
スケッチアップを使いライティングやカメラ、そして多様なマテリアル素材を使って、3Dモデルに命を吹き込む作業を高いレベルで実行し、まるで実写のようなモデルや一枚絵を仕上げることができます。
注意したいのはスケッチアップからV-Rayを使用する場合、最上位プランであるSketchUp Studioのライセンスが必要になる点です。SketchUp Pro以下のプランではV-Rayを使用することができないため、この点のスケッチアップ利用に伴うコストの問題はあらかじめ把握しておくことが大切です。
また、SketchUp StudioはWindowsのみで提供しているプランであり、Mac OSユーザーの契約はできません。そのため、スケッチアップでは必然的にV-RayもMac OSユーザーは利用ができないこととなってしまうので、互換性の問題も考慮しておく必要があるでしょう。
スケッチアップでレンダリングを行うメリット
スケッチアップを使ったレンダリングは、以下のようなメリットをもたらしてくれる点で魅力的です。
豊富な3Dコンテンツを備える
スケッチアップ上で動作するレンダリングツールのV-Rayは、はじめから豊富な3Dコンテンツを用意してくれているため、すぐにでも質の高いモデリングとレンダリング作業を開始することができます。V-Ray関連ソフトのChaos Cosmosを利用することで、レンダリング対応ライブラリへすぐにアクセスし、スケッチアップのモデルの中に取り入れることが可能です。
また、建築マテリアルについても地形やタイル、レンガなどあらゆる素材200種類以上をを用意してくれているので、設計コンセプトに則ったレンダリングを行えます。
シームレスな操作で生産性向上につながる
スケッチアップを使ってレンダリングを行うことで、作業そのものの効率を高められます。モデリングソフトとレンダリングソフトを使い分ける必要がなく、シームレスにツールを行き来し、生産性の高い業務環境を実現可能です。
スケッチアップ以外に複数のソフトを立ち上げるのが面倒であったり、立ち上げに時間がかかったりしていたことにお悩みの方は、最適なソリューションとなるでしょう。
円滑な意思決定につながる
高度にフォトリアルでリアルタイムのレンダリングができるスケッチアップは、意思決定をスマートに進めるためのサポートも提供してくれます。制作したモデルに質の高いレンダリングを行えるのでデザイン上の曖昧さを排除し、関係者間の合意を取りやすくなるからです。
また、スケッチアップ上で素早くインタラクティブにレンダリングを行える軽量さも備えていることから、アイデアをすぐさまモデルに反映し、修正作業にかかる手間を減らし、スピーディに承認を得やすいのも強みと言えます。
スケッチアップのレンダリングツール「V-Ray」の基本機能
スケッチアップのレンダリングツールであるV-Rayでは、多くの機能を備えています。ここではどうレンダリングツールの基本機能について、解説します。
リアルタイムレンダリング
V-Rayを立ち上げることで、スケッチアップでは独自カメラの視点に置き換わり、レンダリング効果を簡単に試行錯誤できるようになります。レンダリング業務そのものの作業負担が小さくなるため、素早くアイデアを反映する上での重要な機能です。
Light Gen
Light Genは、室内外を問わず自然光を自由にシミュレートできる機能です。スケッチアップから状況に応じた様々なライティング効果を、いろいろなパターンを試しながら設定することができます。
フレームバッファ
フレームバッファはV-Rayの強みの一つである、多機能性を下支えする存在です。追加で様々なアプリを導入しなくとも、色の調整やレンズエフェクトなどをモデルにもたらすことができます。
ライトミックス
ライトミックスは、複数回のレンダリングを必要としない照明シナリオ作成機能です。ライトミックス機能を使って様々なライティングパターンを保存し、素早く適用することができます。
アニメーション・VR
レンダリングによって静止画的な運用だけでなく、モデルにアニメーションをもたらすことも可能です。スケッチアップを使用しながら時間の流れとともに変化する様子を確認できるため、非常に便利です。また、VRにモデルを対応させて、閲覧ユーザーが1:1のスケールでモデルを体験できるよう環境を整備することもできます。
リアルタイムレンダリング | Light Gen | フレームバッファ | ライトミックス | アニメーション・VR | |
概要 | 専用カメラの立ち上げにより素早くレンダリングを行える | ライティングのシミュレートを効率よく行える | 追加アプリなしで色の調整やレンズエフェクトをもたらす | 複数のライティングパターンを一回のレンダリング内で実行できる | モデルのシミュレーションやVR化を行える |
使用シーン | アイデアをすぐにモデルへ反映したい時 | あらゆるパターンのライティングを試したい時 | レンダリングをシンプルに済ませたい時 | レンダリング負担を減らしたい時 | モデルのインパクトを肌で体験したい時 |
スケッチアップのレンダリングについてのまとめ
この記事では、スケッチアップの高度なレンダリング機能について解説しました。レンダリング機能を使うためにはハイエンドプランであるSketchUp Studioの契約が必要ではあるものの、モデリングからレンダリングまでの作業を一本化できるメリットは非常に魅力的です。
現在のレンダリング環境に不満を覚えている場合や、幾つもソフトを使い分けるのが面倒と感じている場合は、ぜひ導入を検討しましょう。