優れたゲームエンジンとして知られるUnityですが、実際にはゲーム開発以外にもさまざまな業務を任せることができる、万能のぶんしょ。この記事では、そんなUnityを使って3DCGアニメを作りたいと考えている人に向けて、Unityがどのように3DCGアニメ制作へ役立つのか、その基本や制作に役立つアセットなどを紹介します。
Unityの主な強み
Unityは国内外で広く使用されているゲームエンジンで、ゲーム開発に必要な機能を全て備えている便利なサービスです。他のゲームエンジンと比較しても高く評価されている点としては、以下のような強みが挙げられます。
動作が軽量である
まず、Unityの大きな強みであるのがパフォーマンスの軽量さです。ゲームエンジンはそれ一台で多くのタスクをこなすことができる反面、その負荷は大きく、運用に当たっては相応のマシンスペックが求められるものです。
一方でUnityは、基本的なスペックが揃っているPCであれば軽快に動作することができます。デスクトップPCはもちろん、ラップトップPCでもスムーズに動作するので、ゲーム開発のために本格的なマシンを用意する必要はありません。それでいて高度な3Dモデリングなどにも対応しているため、積極的に導入を検討したいサービスと言えます。
無料で利用できる
Unityは高度なゲーム開発プラットフォームでありながら、無料で利用ができる点も高く評価されています。Unityを個人で利用する場合、あるいは小規模な商業目的のゲーム開発であれば、Unity Personalという無料プランが利用可能です。無料とはいえ基本的な機能は全て揃っており、初心者が不足を感じる心配はありません。
本格的なビジネス利用や高度な機能を利用したい場合には有料プランに切り替えるだけで良いので、別のゲームエンジンを新たに購入する負担もないのが強みです。
ノーコード開発ができる
Unityを使ったゲーム開発は、ノーコードで進めることができます。ゲーム開発を行う上で欠かせないのがプログラミングで、プログラムによって細かく動作を指示することで、ゲームを制御するのが一般的です。
Unityにおいてもこの仕組みは同様ですが、基本的で頻出のプログラムについてはあらかじめテンプレート化されており、プログラムをドラッグ&ドロップで設置しながら制御することができます。そのため、一からプログラミングの基礎を学ばなくとも、簡単にプログラムを組み立てられるというわけです。
手動でのプログラミングが必要になった際も、C#と呼ばれる比較的平易なプログラミング言語を使用して組み立てられるので、学習に多くの時間を必要とはしないでしょう。
質の高いアセットを豊富に利用できる
Unityの便利なところは、ゲームに必要なあらゆるアセット、いわゆるキャラクターや設置物を専用のアセットストアを通じて手に入れることができる点です。
通常であればこれらのモデルは自前で用意しなければならないところ、Unityでは公式・非公式を問わずアセットストアを通じてさまざまなモデルやテクスチャを手に入れることができます。有料のアセットがある一方、無料で利用できるものも充実しているので、費用をかけずに質の高いゲーム開発が可能です。
Unityで3DCGアニメは作れる?
ゲーム開発においては強力な武器となるUnityですが、気になるのがゲーム以外の領域で活躍できるのかどうかです。結論から言うと、Unityはすでにゲーム以外の領域でも広く活用しており、中でも3DCGアニメ制作はUnityが活躍しやすい分野と言えます。
Unityには3Dモデリング機能が実装されているだけでなく、3Dモデルを自由に動かすためのアニメーション開発の機能も備わっています。これらの機能をうまく組み合わせて運用することで、3DCGアニメ作品を手がけることもできるでしょう。
3DCGアニメをUnityで制作するメリット
3DCGアニメーションの制作は、多くの場合専用のソフトを使用して行うものですが、最近ではプロの現場でも3DCGアニメ制作にUnityを採用するケースが見られます。ゲームエンジンであるUnityを3DCGアニメ制作に使用するメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
他の関連ソフトとの互換性が高い
後ほどご紹介しますが、Unityは単体での運用はもちろん、他の関連ソフトとの連携にも優れているのが特徴です。複数のソフトを併用して役割分担することで、より効率的な業務環境を実現できます。
レンダリング負担が小さい
Unityを使った3DCGアニメ制作においては、レンダリング負担が小さい点も評価されています。レンダリングの処理にはどれだけマシンスペックがあっても相応の時間がかかるものですが、Unityは処理負担が小さいだけでなく、リアルタイムレンダリングと呼ばれる、編集効果をすぐに反映できる機能を備えているので、試行錯誤がしやすいメリットがあるからです。
納得のいく表現を得られるまでトライアンドエラーを高速で行い、スピーディに成果を得ることができます。
3DCGアニメ制作におけるUnityの役立て方
Unityを使って3DCGアニメを制作する場合、以下のような工程において活躍することが期待できます。
アニメ本編の制作
劇場公開されるような大作において、全編をUnityで作ることは難しいものの、個人制作やネット上で公開される短編であれば、Unityで本編を制作することが可能です。Unityに実装されているアニメーション機能を使い、キャラクターやその他のオブジェクトを細かく制御できます。
レイアウトの映像化
演出や展開を紙芝居的に構成したレイアウトを、一度簡単に映像化してみたいという時にUnityは役立ちます。Unityは本格的な編集ソフトよりも軽量に動作するので、シーンの確認を素早く行うのに最適なソフトです。
背景シーンなどの制作
ディテールが求められない描写やシーン、例えば背景の様子や大衆の動きなどを表現するシーンなどにおいては、Unityでも十分に表現が可能です。シンプルな動作をスピーディに仕上げることができるので、本格的な編集ソフトよりも効率的に作業を進められるでしょう。
3DCGアニメをUnityで作る際に役立つアセット
Unityのアセットストアには、3DCGアニメ制作に役立つアセットも数多く揃っています。ここでは主なアセットをピックアップして紹介します。
Mega Animations Pack
Mega Animations Packは、人型のキャラクターを動かす上で便利なモーションを多数収録しているアセットです。極めて自然な人間の動作をさまざまなシチュエーションに合わせて用意しているので、一つ一つの動きをゼロから手作業で製作する必要がありません。
MOBILITY PRO: Mocap Animation Pack
MOBILITY PRO: Mocap Animation Packも、人型のアニメーションを多数収録しているアセットです。走る動作と全力疾走を分けて用意するなど、より細やかな動きを簡単にキャラクターへ適用できる便利な仕様となっています。
3DCGアニメをUnityで作る際に合わせて用意したいソフト
Unity以外にも以下のソフトを用意することで、より本格的な3DCGアニメ制作を実施できるでしょう。主な役立て方としては、以下の表のとおりです。
Unity | 3ds MAX | After Effects | |
活用方法 | 背景シーン制作などディテールが必要のないパートのアニメーション、モデリング | ディテールが必要な本編パートのアニメーション、モデリング | 制作したモデルやシーンの合成、エフェクトの追加 |
3ds Max
3ds Maxはハイエンドなアニメーション制作やモデリングが行えるソフトです。3DCGアニメ制作現場における標準的な製品であり、多くの3DCGアニメ作品はこの製品を使って作られています。
After Effects
After Effectsはプロの現場で採用されている、映像の合成やモーショングラフィックス制作に活躍するソフトです。3DCGアニメや実写映画など、幅広い映像作品に用いられてきた実績のある製品と言えます。
3DCGアニメをUnityで制作する際の注意点
3DCGアニメ制作において一定の活躍が期待できるUnityですが、活用に当たっては注意すべき点もあります。
他製品との互換性には限界がある
プロの3DCGアニメ制作現場でも徐々に採用されつつあるUnityですが、その互換性については限界があります。例えば3ds Maxで作成したキャラクターリグをUnityに引き継ぐことができないような、互換性の問題が挙げられるでしょう。
そのため、ハイエンド3DCGアニメーションソフトほどのパフォーマンスをUnityに期待することはまだ難しいのが現状です。
専用ソフトほどの機能性は備えていない
Unityはゲーム開発を目的としたソフトであるため、アニメーション制作の機能については3DCGアニメ専用ソフトには劣ります。ゲームを組み立てる能力についてはUnityは非常に優れているものの、全編3DCGアニメの作品制作においては能力不足が目立つでしょう。
ゲーム内に差し込むショートムービーであればUnityで事足りますが、本格的な3DCGアニメ制作においては別途ソフトの用意が必要です。
Unityを使った3DCGアニメ制作のまとめ
この記事では、Unityを使って3DCGアニメ制作を行いたい人に向けて、Unityの活用方法や活用のメリットを解説しました。とにかく軽量に動作するUnityは、全編の制作においては少し物足りないスペックである一方、情報共有やレンダリングの高速化を図る上では、極めて有用性の高い製品と言えます。
Unityをどのようなシチュエーションで活用すべきかを検討しながら、うまく3DCGアニメ制作に役立てていきましょう。